当時の送信所は、大型の回転機械が並び、高電圧の高周波機器や大型の高周波コイルと多数の高圧コンデンサーで構成されていました。
操作パネルは開放型で、空調設備もありませんでした。
騒音と発熱で、耐え難い職場環境であったと推察します。
僅かな計測器だけで運転しなければならず、積み重ねた経験が頼りでした。
高価な設備であり、昼夜に亘って、重要な通信情報を扱うことで、多大なストレスを生じたであろうと推察できます。
筆者は、嘗て高圧ガス製造業で働き、高圧プラント、大型圧縮機、高圧電気回路などの操作を経験しました。
従って、当時の作業員の運転操作状況や困難さを推察できます。
当時の「運転操作マニュアル」は見当たりません。
そこで、記念館訪問者に説明する為の「幻の運転マニュアル」の作成を試みました。
これは、理論的に解析した送信設備機器の機能に基ずいた手順です。
当時の運転員が、このマニュアル通りに操作していたかどうかは、検証できません。
以下は「幻の運転マニュアル」です。
1。起動準備・・・動力部の運転系統、誘導電動機の起動レバー、直流発電機用の励磁抵抗器の状態、トリプラーとキーイング・チョークの油循環バルブ、自動制御装置の電源投入などの確認をします。
2。補機の運転・・・給水ポンプ、潤滑油ポンプ、送風機、励磁機などを起動します。
3。誘導電動機の起動・・・スイッチ投入して、回転音を聞きながら、水抵抗器のハンドルを回して抵抗値を順次減らして、規定回転数まで上昇させます。
そして、スリップリングの短絡環レバーを操作して、起動用水抵抗器を切り離します。
この状態では、直結の直流発電機は無負荷状態で運転されています。
4。直流電動機の起動
連結用直流電磁開閉器を投入して、直流電動機を起動します。
直流発電機用の励磁抵抗器をハンドル操作して、高周波発電機の運転状態を見ながら、直流電動機の回転数を上昇させて高周波発電機を規定速度にします。
5。トリプラーの起動
トリプラー切替盤の状態を確認して、トリプラー接続用電磁開閉器を投入します。
トリプラー用の励磁機を起動して、出力をトリプラーの起動コイルに接続します。
6。高周波回路の安定を確認
アンテナ出力結合トランスまでの各部状態、発電機の回転数と出力電流、高周波回路の出力電流などの確認をします。
7。タンク回路の安定を確認
送信待機状態(SPACE 時と同じ)であるので、高周波発電機の出力が 300KW、高周波回路の出力電流計が 250A、アンテナ回路の電流計が 230A 程度となります。
8。同調点調整
送信相手に応じた周波数で最高効率で送信するために、以下の方法で調整します。
切換器のハンドルを「MARK」側にします。
(この操作では、高周波発電機は 100%出力状態であり、MARK 時を基準として各回路を調整できます。)
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