高齢者・彦市のブログ

世界遺産の長波送信所がある!?

それは、スウェーデンの「グリメトン無線局」です。

1950 年代から 1996 年の間は、潜水艦への送信も行われました。
そのため1968 年にはトランジスタや真空管を採用した2台目の送信機が導入されて、 現在もまだスウェーデン海軍が運用しているようです。

従来の発電機式送信機の 17.2kHz と同じアンテナを使っているが、2台目の送信機は 40kHz 付近で設計されているようです。


1996 年に、旧式の発電機式送信機は運用を停止しました。 
しかし、送信機の状態が良かったので、「世界遺産」に登録されました。

世界遺産」の発電機式送信機は、「アレキサンダーソン・デイ」と「クリスマス・イブ 」に限り運転されます。 
そして、発電機式送信機による 17.2 kHz の「モールス信号」で特別記念局が開局されま
す。
 
また、夏期には送信機を見学することもでき、「アレキサンダーソン・デイ」にはイベントが開催されます。 
同局は、超長波送信だけにとどまらず、短波帯、FM放送、テレビ放送の送信も行って
います。

1966 年には、40kHz 用送信機のある建物の隣に、地上高 260 m の支線付マストが建てられました。 

以上は、ウィキペディア「ヴァールベリの無線局」から引用しました。 

 

依佐美送信所と類似した施設ですが、以下の点が相違しています。

1.高周波発電機
2.駆動モーター
3.アンテナ線敷設状態
4.運転操作盤と制御回路

 

1.高周波発電機
高周波発電機の設計では、磁極数と回転数が問題になります。 
周波数が高いほど、磁極数を多くして回転数も高くしなければなりませんが、遠心力によって機械が破損する危険があるので、設計上の制約があります。 
グリメトン無線局の発電機は、この問題点を解決する為に、スエーデン人であるアレキサンダーソン氏が考案したものです。 
製造はアメリカの GE 社ですが、当時はアレキサンダーソン氏が所属していました。 
その特徴ある構造は、回転子磁極を挟むように、両側に固定子磁極を配置して、磁極形状を軸方向に長手の長方形として円周上により多く配置できる形状としています。 
更には、回転子のリブ部を絞り込むことで重量を減らして、許容遠心力の回転数で規定の周波数を発電できる大型機の開発に成功しました。
(従って、トリプラーは使用されておりません)

2.駆動モーター

稼動実況映像から判断したのですが、駆動モーターは巻線型誘導電動機のようです。

1.大型の液体抵抗器が 3 台ある。
2.駆動モーターにスリップ・リングがあって、ブラシが多数配備されている。
3.大型整流器や M-G(交直変換機)が見当たらない。
4.中間に歯車増速機を入れている。

以上の理由ですが、この方式では発電周波数のバラツキが少し気がかりですが、設備がシンプルです。 
回転数の安定化は、2 個のはずみ車(モーター側と発電機側)と歯車増速機、それにモーターの 2 次抵抗制御で実現しています。 
駆動モーターの出力は300KW 程度と推定されます。

3.アンテナ線敷設状態
4 本足の固定式 T 型鉄塔であり、高さ 127 m 頂部には補強された幅 50 mの水平架台があります。 
これが6基直列に配置されて先端がアメリカに向けられていると推察します。 
これに、8 本のアンテナ・エレメント線が並行して吊架されています。
エレメント(水平部分)の長さは1440m で依佐美よりやや短いと推察します。 
アンテナ線は懸垂碍子を介して吊架されており、鉄塔はアース電位です。
 Multiple tuned antenna (複同調式)であり、末端部に調整用コイルを接続してアース
に落としています。 
この方式は、指向性が強いので放射電波が効率よく伝わります。 
構造がシンプルで場所も取らない。
海岸局なので、塩害に対する考慮がなされています。 
それは、傘型の絶縁カバーとリング状の放電環の組み合わせです。 
傘型のカバーは塩分の付着を減らす為であり、放電環は雷などの異常電圧を低減する為です。 
この鉄塔には支線が無く、地上 50 m付近までの構造には工夫が凝らされています。 
つまり、2 本足に分割された鉄塔を地上で組み立て、足の外側2か所をピン接続として横に並べた状態から、ウィンチとワイヤーで引き上げる工法によって、頂部で合体させています。 
安全度の高い工法であると思います。(2分割トラス)

4.運転操作盤と制御回路
アメリカの GE (GeneralElectric)社が制作したもので、ドイツのテレフンケン社製の依佐美送信所のものとはかなり相違しています。 
途中で改造されているであろうから、単純に比較できませんが、当時の技術レベルでは、アメリカの GE とドイツのテレフンケンが世界をリードしていたと思われます。
 
余談ですが、明治時代に日本に水力発電所が建設された際に、東京電力ではアメリカから、関西電力ではドイツから発電機を輸入しました。 
これが、50 サイクル地域と 60 サイクル地域が生じた始まりです。 
このように、アメリカとドイツの2強国が重電業界を2分していたと推察します。

 

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