「水素燃料電池車」に水素ガスを充填する「水素ステーション」には、ガソリンスタンドに類似した「水素ディスペンサー」があります。
ガソリン車の給油時間は1~2分ですが、水素ガスを充填する場合は、3分間を要します。
下図は、水素ディスペンサーの1例です。
70MPa(約700気圧)で短時間に充填するための特別な機能部品で構成されていますので、私が得た情報を整理して、以下に解説します。
1.充填用マニホールド
詳細仕様が公開されていないので私の推察ですが、300リッターのものが2本並列接続されているでしょう。
2.プレクーラー
短時間充填するために、-40℃まで充填用マニホールドの圧縮ガスを冷却する必要があります。
この為の熱交換器で、マニホールドの内部に設置されていると推察します。
そして、外部の冷凍機から還流する冷媒が供給されます。
3.緊急離脱カプラ
充填中にノズルが外れたり、ホースからの漏洩を検出すると、瞬時に、ガスを遮断する機能を持つユニットです。
逆止弁に類似した構造であると推察します。
4.コリオリ流量計
2個の平行したU字型チューブの中間点に一定の周波数振動を与えておいて、その内部に流体を流した際に、その質量と速度(質量流量)に比例したコリオリの力が働きます。
この力はパイプの入り口側と出口側では逆方向にはたらき、パイプがねじれたような状態となります。パイプの入り口側と出口側の変位を出力電圧信号として取り出し、ねじれ量を測ることで流量を絶対質量として連続測定して演算回路で積算します。
下図は、KEYENCE社の資料から借用しました。
コリオリ式流量計 | 流量計の種類 | 流量知識.COM | キーエンス (keyence.co.jp)
5.高耐圧ホース
82MPa(約820気圧)に耐える特殊なホースです。
幾重にもステンレス金網をかぶせて、耐圧強度とフレキシブルな形状を保つ特性を持っています。
下図は、ブリヂストン(株)の資料から借用しました。
6.ノズル
特殊な構造で、水素ガスの機密性とカップリング時の操作性を満たしています。
推察ですが、複数のOリングを配して、正確な寸法で高度に平滑加工されています。
下図は、日東工器(株)の資料から借用したものです。
下図は、ノズルの使用状況です。(日東工器(株)のビデオから)
[ ガスの充填についての推察 ]
ガソリンスタンドでのガス・チャージに準じた操作性を実現するために、下記の原理による「バッチ式」充填方式です。
詳細に関する公開資料を入手できませんので、私の推察による見解です。
トヨタのMIRAI車の燃料タンクは、旧型では2個の合計容量が122.4リッターです。
新型(発売中)は、3個の合計容量が141.0リッターです。
ディスペンサーのマニホールド600Lに80MPaで-40℃に冷却した状態のガス量は43kgです。
3分間で車にチャージすると、残量10%の空状態からでは、MIRAIの旧型車では72MPaに、新型車では69MPaになってバランスします。
そして、チャージ後の車側のガス温度は20~30℃になっているでしょう。
車のガス量は、旧型車では4.9kgとなり、新型車では5.8kgとなっているでしょう。
ここで、充填用マニホールドのガス温度を-40℃に冷却する理由を説明します。
「高圧ガス取締法」で、圧縮ガス貯蔵時の最高温度は35℃以下に規制されています。
3分間でチャージすると、断熱圧縮熱でガス温度が60~70℃上昇します。
従って、チャージ後のガス温度を35℃以下に抑えるために、余裕を見て-40℃にするのです。
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